サイコシンセシスはイタリアの精神科医であるロベルト・アサジョーリが創始した心理療法のひとつです。サイコシンセシスの基本的なコンセプトは「統合(シンセシス)」です。人間に備わる全ての側面をバランスよく調和的に発達させ、それを統合していこうというのが、サイコシンセシスの目指すところです。 これはロルフィングのコンセプトとも共通しています。ロルフィングの初期のころの名称は、「Structural Integration(構造的統合)」というものでした。これは身体の構造を「統合」することをその目的にしているための名称です。まさに「統合」です。 サイコシンセシスの本の中にはサイコシンセシスのワークのひとつとしてロルフィングを紹介しているものもあります。「人間」という生き物は、何によって出来ているのか、その質問がサイコシンセシスを考える上で重要になります。 医師や科学者は「身体」という物体を人間と考えます。哲学者は「知性」や「理性」こそが人間だと考えるでしょう。あるいは文学者や芸術家ならば、いや「感情」・「感性」こそ人間を構成していると主張するかも知れません。さらには「霊的なもの」や「魂」こそ人間だと考える人もいます。 また、わたしたちの行う活動もさまざまです。一貫性をまったく欠いていて、二重人格どころか多重人格そのものです。しかし、そのどれもが、「わたし」に備わる機能であり側面です。 どれかひとつをとって、それこそ「わたし」ということができないと同じように、どれひとつを欠いても「わたし」ではなくなってしまいます。「わたし」という人間は、それらさまざまな面が組み合わさってできた存在なのです。 しかしさまざまな面があるからといって、それら全てをバランスよく発達させ、調和的に生きている人は、ほとんどいません。すごく頭もよくて、論理的に物事を捉え、驚くべき速さの理解力をもつ人が、人間関係ではすぐにトラブルを起こして、周囲の人からはただの変人だと思われていることがよくあります。 これはその人が「知性」の面のみを大きく発達させ、自分や他人の感情に無関心で、その表現方法も受け取り方も知らなかったりすることに原因があります。バランスがうまく取れていないのです。 またオリンピックでメダルを取るような素晴らしい肉体能力を持つアスリートや、歴史に残るような記録を残すプロ・スポーツ選手が、インタビューでとても稚拙な応対をしたり、あるいは社会問題を起こしたりしてしまうのも、不調和にその原因があります。 人間に備わる全ての側面――――身体、感覚、感情、想像、直感、知性、倫理、社会性など――――をバランスよく調和的に発達させていこうというのが、サイコシンセシスのゴールです。 サイコシンセシスでは、そのゴールである「統合」に到達するための地図のようなものがあります。以下に紹介しますが、これはかなり簡略化してあり、実際のカウンセリングではもっと複雑にさまざまなものが組み合わされますので、そのつもりでご覧ください。 【自分のパーソナリティを知るフェイズ】 ・サブ・パーソナリティを知る ・自分のさまざまな面を知る ・名前をつける 【指揮者を見つけて機能させるフェイズ】 ・パーソナリティから自由になる(脱 同一化)ワーク ・指揮者としてのセルフを見つける ・意志のワーク 【トランスパーソナルなフェイズ】 サイコシンセシスワークの第一歩は、自分自身、自分のパーソナリティ(人格)をよく知るところからはじめます。 私たちは自分をひとつの人格だと思っています。でも、たとえばお母さんに対するときのあなたと恋人といっしょにいるときのあなたとはまるで別人のようでしょう。これを二重人格だ、といって非難する人もいますが、これは人間であるならば当然のことで、二重人格どころか三重人格、四重人格、いや無限の人格が自分の中に隠れています。 それはそれで自然のことなのですが、ただあなたがそのたくさんの人格(これはサブパーソナリティと呼びます)の存在に気づかずにいると、本来のあなたが失われてそれらの人格に操られてしまうとサイコシンセシスでは考えます。 相手がお母さんならばあなたの親ですから甘えてもいいでしょう。時には怒鳴っても赦してくれます。でも、そういう甘えサブを上司の前で出したらどうなるでしょうか。「自然な私を出して何が悪いの」と開き直るのもいいですが、それは実は自然なあなたではなく、〈甘えサブ〉に操られている無力なあなたがいるだけなのです。 そこでサイコシンセシスでは、まずは自分の中にどんな人格がいるのかを知って、それらを認知・承認することによってそれから自由になることを提案します。サブ・パーソナリティ自体は良くも悪くもないニュートラルな存在です。ただ、それらが出るべき場や時でないときに出現してしまうことによって問題を生じさせることがあります。 そこで、サブ・パーソナリティから自由になったあとは、それらのサブ・パーソナリティを指揮する統合センター(セルフを呼びます)をあなたの中に確立していく、それがサイコシンセシスの第2段階です。 サイコシンセシスも、ひとつひとつのサブパーソナリティを「分離」し、そしてそれらをセルフによって「統合」していくというロルフィングと同じようなコンセプトをもった心理療法なのです。 次ぎのページへ |